FXトレードを行っている方であれば、専業トレーダーとしてたくさん稼いで、自由でぜいたくな暮らしを夢見る方も多いのではないでしょうか?
しかし、ご存じの通り、そのような暮らしを簡単に手に入れることは難しいというのが現実です。もし、すぐに自由でぜいたくな暮らしが手に入れられるなら、多くの方が現在の仕事をやめて、専業トレーダーとして生活しているはずです。
でも、実際にはそんなことはありません。周りを見渡して、専業トレーダーとして生活している人に頻繁に会うことはほとんどないと思います。
もちろん、トレードにかかわっている方であれば、多くの専業トレーダーが周りにいるという方もいるかもしれません。
しかし、ほとんどの方はそのような状況にはありません。ですので、専業トレーダーとして生活している人に合うことも少ないと思います。では、なぜ専業トレーダーとして生活している人は少ないのでしょうか。
いろいろな要素はありますが、単純に専業トレーダーになることが難しいからではないでしょうか。その難しさを理解するためにも、この記事では客観的に判断できる数字を使って掘り下げていきます。
専業トレーダーとして生活をしていきたいという夢を現実にするためにも、数字をもとに、専業トレーダーというものを理解していきましょう。
そもそも専業トレーダーとは
FXの専業トレーダーとは、FXトレードの売買益やスワップポイントの利益のみで、生活費を稼いでいる人たちのことを言います。
資金量や年収、生活スタイルは様々で、大きな利益を出している方もいれば、ある程度の利益で満足されている方もいます。
ですので、明確な定義などはなく、FXトレードだけで生活費などの費用全般を捻出できていれば専業トレーダーということもできます。
また、生活費は人それぞれなので、いくら以上稼げるから専業トレーダーということもできません。
例えば、FXトレードで年に1000万円稼げていたとしても、生活費全般で年に1500万円かかっていれば、他に何か仕事をして500万円稼がなくては生活できません。この場合は専業トレーダーというよりも、正確には兼業トレーダーということになります。
このように、それぞれのケースで必要な金額や稼げる金額は変わってきます。各々の生活レベルを想定しながら専業トレーダーとして稼ぐ必要のある金額を検討していかなければなりません。
しかし、何も判断基準がなければ、具体的なアクションプランを作成できないので、一般的に専業トレーダーとして生活していくためには、どのくらいの稼ぎが必要なのかを探っていきます。まずは、大まかな生活費を基準として、稼がなければならない金額を見ていきましょう。
専業トレーダーになるためにはどのくらい稼ぐ必要がある?
専業トレーダーとして生活していくには、まず自身の生活費を稼がなければなりません。生活費を大まかに計算すると下表のようになります。それぞれ確認していきましょう。
住居 | 食費など | 交際費 | 通信費 | 水道ガス光熱費 | その他(社会保険料、雑費) | 合計 | |
単身世帯 | 50,000 | 40,000 | 15,000 | 6,000 | 10,000 | 50,000 | 171,000 |
二人世帯 | 60,000 | 50,000 | 30,000 | 12,000 | 18,000 | 60,000 | 230,000 |
四人世帯 | 70,000 | 80,000 | 30,000 | 24,000 | 23,000 | 70,000 | 297,000 |
必要な利益 | 税金 | 税引き後の年間必要利益 | |
単身世帯 | 4,104,000 | 833,728 | 3,270,272 |
二人世帯 | 5,520,000 | 1,121,388 | 4,398,612 |
四人世帯 | 7,128,000 | 1,448,053 | 5,679,947 |
まず、単身世帯では、およそ月に171,000円の生活費が必要です。社会保険料は稼ぐ額によっても変わってくるので注意が必要です。
この生活費に加えて、資金を増加させていかなければなりません。ですから、生活費とは別に、この倍の利益額342,000円が必要と考えられます。よって、年間での必要利益額は4,104,000円になります。
次に夫婦二人世帯では、およそ月に230,000円の生活費が必要です。年間必要利益額は5,520,000円になってきます。
二人世帯の場合、片方が給与所得者として会社に勤めていれば、その分の定期収入があるので、専業トレーダーとしては、心の余裕ができるかと思います。
最後に、子供が二人の四人世帯ではどうでしょうか。生活費は月に300,000円近くになり、年間では3,564,000円必要になってきます。
稼がなければならない額も大きくなって、年間必要利益額は7,128,000円です。お子さんの年齢にもよりますが、奥様(もしくは旦那様)が子育てなどで手が離せない状況であれば、給与所得としての安定収入が見込めないことになります。
安定収入がない状態での旦那様(奥様)のプレッシャーは重くなってしまうでしょう。そのプレッシャーがトレードに悪影響を及ぼす場合もあるので、注意が必要です。
また、職歴の空白期間が続いたり、信用力が著しく低下してしまったりすることも考えなければなりません。
ですので、専業トレーダーとしては、信用力の低下分も含め、より多く稼いでいかなければ厳しい状況に陥ってしまう可能性もあることを覚悟しておく必要があります。
では、前述した利益を稼ぎ出すためには、いくらくらいの資金が必要になるのでしょうか?
専業トレーダーとなるために必要な資金量
専業トレーダーとして、最低限稼がなければならない利益額を見てきました。では、その利益を稼ぎ出すために、どのくらいの資金が必要になるのでしょうか?
取引枚数によって金額は調整できるので、まずは、pipsで考えていきます。スキャルピングトレードの場合、1日に10pips、デイトレードの場合1日に25pips、スイングトレードの場合週に100pipsを稼げると仮定します。
この数値をもとにした場合に、必要年収を得るには、どのくらいの資金量や取引枚数、レバレッジを設定する必要があるのでしょうか。それぞれの世帯ごとに見ていきましょう。
単身世帯の場合
単身世帯 | 1日 | 週間(5営業日) | 月間(20営業日) | 年間(240営業日) | 必要年収 |
スキャ | 10 | 50 | 200 | 2400 | 4,104,000 |
デイ | 25 | 125 | 500 | 6000 | 4,104,000 |
スイング | 100 | 400 | 4800 | 4,104,000 |
取引枚数 | 稼げる年収 | ドル円(105円)で取引する時の金額 | レバレッジ | 必要資金量 |
170,000 | 4,080,000 | 17,850,000 | 15 | 1,190,000 |
70,000 | 4,200,000 | 7,350,000 | 10 | 735,000 |
90,000 | 4,320,000 | 9,450,000 | 5 | 1,890,000 |
上表より1万枚を最低取引単位として、四捨五入すると、単身世帯であれば、1トレードあたりの取引枚数はスキャルピングトレードで170,000枚、デイトレードで70,000枚、スイングトレードで90,000枚です。
この額を取引するために必要な最低資金量は、スキャルピングトレードで105円×170,000枚=17,850,000円(ドル円の現在レートを105円とした場合)。
損切りを小さく抑えることができるスキャルピングトレードでは、レバレッジをある程度高く設定することができます。仮に、レバレッジを15倍に設定すると、17,850,000÷15=1,190,000円が必要な最低資金量となります。
デイトレードの場合は、スキャルピングトレードと比べると、損切り幅を大きく取らなければなりません。ですので、レバレッジを少し低く抑えて10倍に設定すると、必要な最低資金量は735,000円になります。
そして、スイングトレードでは、さらに大きく損切り幅をとらなければなりません。したがって、レバレッジは5倍に設定しておきます。すると必要最低資金量は1,890,000円になってきます。
二人世帯の場合
二人世帯 | 1日 | 週間(5営業日) | 月間(20営業日) | 年間(240営業日) | 必要年収 | 取引枚数 |
スキャ | 10 | 50 | 200 | 2400 | 5,520,000 | 230,000 |
デイ | 25 | 125 | 500 | 6000 | 5,520,000 | 90,000 |
スイング | 100 | 400 | 4800 | 5,520,000 | 120,000 |
取引枚数 | 稼げる年収 | ドル円(105円)で取引する時の金額 | レバレッジ | 必要資金量 |
230,000 | 5,520,000 | 24,150,000 | 15 | 1,610,000 |
90,000 | 5,400,000 | 9,450,000 | 10 | 945,000 |
120,000 | 5,760,000 | 12,600,000 | 5 | 2,520,000 |
次に二人世帯ではどうでしょうか。上表からわかる通り、必要年収額が上がったことで、取引枚数も増えています。
スキャルピングトレードでは、取引枚数は6万枚に増え、10pips動くごとに6,000円幅でリスク、リターンがともに増えることになります。
四人世帯の場合
四人世帯 | 1日 | 週間(5営業日) | 月間(20営業日) | 年間(240営業日) | 必要年収 |
50 | 200 | 2400 | 7,128,000 | ||
125 | 500 | 6000 | 7,128,000 | ||
スイング | 100 | 400 | 4800 | 7,128,000 |
取引枚数 | 稼げる年収 | ドル円(105円)で取引する時の金額 | レバレッジ | 必要資金量 |
300,000 | 7,200,000 | 31,500,000 | 15 | 2,100,000 |
120,000 | 7,200,000 | 12,600,000 | 10 | 1,260,000 |
150,000 | 7,200,000 | 15,750,000 | 5 | 3,150,000 |
そして四人世帯ではさらに取引枚数を上げなければなりません。それに加えて、責任も重くのしかかってくるので、プレッシャーは想像しているよりも大きなものになってくるでしょう。
その責任に伴うプレッシャーを考慮すると、もう少しリスクの低い投資もあわせて行いたいところです。
以上は、必要な最低資金量のラインであって、ドル円以外の銘柄もトレードする場合は、もっと資金が必要になってきます。
さらに言えば、月に200pips~500pips稼げるということを前提に計算しているので、コンスタントに月に200pips~500pips稼ぐスキルも必要です。では、コンスタントに稼ぐための方法を見ていきましょう。
コンスタントに稼ぐ方法
ある程度コンスタントに利益を積み上げていく方法は、結論から言ってしまえば、地道な検証の積み重ねしかありません。
がっかりされるかもしれませんが、ずっと勝ち続けられる手法はありません。また、すぐに勝てるようになる手法もありません。
なぜなら、その手法がマッチする相場がずっと続くことはないからです。必ずその手法がマッチしない相場がやってきます。その時に、しっかり対応できるかどうかが非常に重要になってきます。
例えば、トレンド相場の時に移動平均線の反発でトレードしていれば、高い勝率で比較的大きな利益も出やすく、トータルで勝ちやすくもなります。
しかし、トレンド相場はいつまでも続くわけではなく、必ずレンジ相場がやってきます。レンジ相場では移動平均線を使って、同じようにトレードしていれば、エントリーしては逆行され、順行したと思ったらすぐに反転してしまう、などのように上手くいかない状況が頻発するようになります。
上手くいかない状況になったときに、静観できればいいのですが、経験を積んでいない状態では、静観するという冷静な判断が下せるとは思えません。
むしろ、失った利益を取り戻そうとして、トレードを増やし、ミスを連発し、結局それまでに稼ぎだした利益以上の損失を出してしまうことになる可能性の方が高いと思われます。
ですので、常に検証し微調整していく必要があるのです。このように、専業トレーダーとして生活していくことは、決して楽なことではありません。
だからといって、難しい検証を行わなければならないということではないので、安心してください。
では、検証はどのように行っていけばよいのでしょうか?次は検証についてかるく触れておきましょう。
専業トレーダーとして生活するために必要な検証とは
検証と言っても難しいことをする必要はなく、ご自分のトレードの振り返りを行うだけです。
ある程度の知識を持っているのであれば、勝てるようになるための方法は、自分の外側ではなく、内側にあります。自分の内側を見るためにも、過去に行ったトレードを振り返ることが一番です。
例えば、連敗しているトレードを見ると、深夜の時間帯が多く、どれもトレード回数が過剰になっているということに気づいたとします。
なぜ、こんなに計画性のないトレードをしているのかを振り返ってみると、深夜の時間帯ではお酒を飲んで酔っ払った状態でトレードを行っていたとわかります。
酔っ払った状態では、気持ちが大きくなりリスクを過小評価してしまい、普段より大きなリスクをとるようになります。
それに加えて、感情的にもなりやすく、少しの逆行にも耐えられなくなります。また、時間帯的にも値動きが激しくなることがあるので、余計に感情的になりやすくなってしまいます。
このような状態でトレードしていては、連敗するのも当然です。したがって、酔った状態でトレードを行い、連敗していることがわかれば、「トレードをするときはお酒を飲まない」というルールをつくり、そのルールを守るだけです。
簡単なことですが、トレードの振り返りをしっかり行っていなければ、単純な原因にも気づけず、同じような過ちを忘れたころに繰り返してしまいます。
ですので、検証と言っても特別なことをする必要はなく、まずは、自分のトレードを振り返り、わかりやすい修正点から把握し、それに対処していくだけです。
この繰り返しを地道に行い、悪い癖を排除して行けば、自然と勝てるトレードが残っていきます。その結果として、トータルで勝てるようになってくるはずです。
以上、トレードで「稼ぐ(利益)」という面に焦点をあてて解説してきました。しかし、トレードで「稼ぐ」ためには「損失」にも目を向ける必要があります。次は「損失」に焦点を絞って見ていきましょう。
専業トレーダーとして稼ぐためには損失を受け入れる
トレードで稼ぐには損失のことも考えなければなりません。なぜなら、リスクを取るからこそリターンを得ることができるからです。
例えば、ドル円を100円で買ったとします。この時点では、90円に下がるかもしれませんし、110円に上がるかもしれません。つまり、勝つか負けるかわからないということです。
勝つか負けるかわからないということは、損をする可能性もあるわけで、その損失分を受け入れられなければなりません。
損失分を受け入れるということは、通常その損失分を自分の資金で賄うことができるという意味です。
ですから、自分の持っている資金で賄えない損失であれば、受け入れたことにはなりません。もう少し厳密にいえば、自分の資金に見合ったリスクを把握し、その範囲内の損失で抑えるようにする必要があるということです。
これは当然のことなのですが、実際のトレードになると、リスクを軽く見積もってしまい、自分の資金に見合わないリスクをとって、計画性のないトレードをしてしまう方もいるのが現実です。まずは、資金面からの損失を受け入れましょう。
損失を受け入れるためには、もう一つメンタルの側面からも考えなければなりません。メンタルの側面から損失を受け入れるには、確率の観点から損失を考える必要があります。
例えば、勝率60%で損益比1:1の手法を使い、10万通貨でトレードしていれば、10回のうち4回は負ける計算になります。
勝ち負けの発生順序は決まっていないので、いきなり4連敗するという事態もあり得ます。10万通貨で取引しているので、1回あたり10,000円の損失が発生します。4連敗では40,000円の損失がいきなり発生することになります。
この損失に対する備えとして資金面はもちろんのこと、メンタル面からの備えも必要です。4連敗したからといって自分の手法に疑問を抱いたり、損失を回避したいという気持ちが強くなりすぎて、エントリーすることを躊躇してしまったり、というような事態に陥らないようしなければなりません。
つまり、4連敗した直後でも、いつもと同じようにトレードができるだけのメンタルが備わって初めて、損失を受け入れたということになります。
では、このようなメンタルを手に入れるためにはどうすればよいのでしょうか。損失を受け入れるメンタルを手に入れるためには、やはり地道な検証しかありません。
なぜなら、このような状況に対処するためには、心の底から「トレードを繰り返していけば、トータルで勝てる」ことを信じ切る必要があるからです。
勝てることを信じ切るには、繰り返し自分自身に教え込むしかないのです。トレードをして修正して、またトレードをして修正する。この繰り返しで、手法や自分自身への信頼を自分の中で、育てていくしかありません。
このように、損失面からのリスクを想定し、そのリスクに対してなんらかの対策をしておくことで、リスクに直面した時の動揺を最小限に抑えることができるようになります。
専業トレーダーになって「稼ぐ」という利益の部分だけを見ていると、気分もよく、やる気にもなってきます。しかし、いつしか遭遇するであろう「稼げない」という落とし穴にはまってしまう可能性も高くなってしまいます。
ですから、リスクを想定し、それに対する対策を練っておくことが必要になってくるのです。
まとめ
専業トレーダーとして生活していくためには生活費はもちろんのこと、税金なども支払っていかなければなりません。
さらに、一般的な会社員に比べて、信用力も低下してしまうので、それを補えるだけの資金量やトレードでの利益、トレーダーとしての実力も必要になってきます。
そこで、まずは生活費と資金の増加分も含めた最低限の金額を把握してきました。さらに、その金額に基づき必要な利益額と、その利益を稼ぎ出すために必要な最低資金量も計算してきました。
しかし、これらはあくまで必要と考えられる最低額であり、生活レベルや現在の状態など様々な側面を考慮する必要があります。ですから、ご自分の状態も考えあわせながら必要な額を把握していくことになります。
また、想定の利益額は毎月コンスタントに稼げるという前提のもと計算しているので、この前提がなければ、成り立ちません。
コンスタントに稼ぐ基礎力を身に付けるためにも、自分のトレードの振り返りが必要であることを解説しました。
そして、最後に「稼ぐ(利益)」ことだけに目を向けていると、思わぬ落とし穴にはまってしまう可能性があるので、できる限りリスクを把握し、それに対する対策をしておきましょうということも解説しています。
専業トレーダーになるまでも大変ですが、なったあとも気が抜けない状態が続きます。ですので、しっかりとした覚悟を持ち、多少悲観的になるくらいにリスクを把握し、その上で自分に必要な資金量を計算していけば、専業トレーダーとして活躍できる日も近くなるのではないでしょうか。